京都市中京区の内科・循環器科・糖尿病内科 医療法人 鳥居内科
美食や過食、脂肪分の過剰摂取、運動不足など生活習慣の変化に伴い、高脂血症の患者数は増加の一途をたどり、推計では2,000万人以上に達するとされています。
高脂血症は、血液中を流れるコレステロールや中性脂肪などの脂質成分が適正な範囲を超えて上昇した病態のことをいいます。食事から取り込んだ脂肪分は腸管から吸収されて、肝臓で再処理を受けたあと、血液を通して全身へ運ばれ、エネルギー源あるいは細胞を造る材料として適切に利用されます。この収支バランスが崩れると血液中に脂質成分が過剰に溜まった状態、すなわち高脂血症となります。
血管の内側は内皮細胞という細胞に覆われていますが、脂質成分が必要以上に長く血管内に停滞すると、内皮細胞は傷つきやすくなり、炎症が起こります。また傷ついた血管の壁に脂質成分がどんどん溜まっていきます。自覚症状がないまま動脈硬化が進行し、脳卒中や心臓病などの合併症を発症します。生命の危機に直面し、また生活の質が低下します。
高脂血症の治療は、食事療法、運動療法、薬物療法によって、血液中を流れる脂質成分を適切な範囲にコントロールし、これら合併症の発症予防、また進行抑制をすることです。生活の質を向上し、幸せな人生にすることが最大の目的です。
以前は、悪玉コレステロール値が高い「高コレステロール血症」と中性脂肪値が高い「高中性脂肪血症」を合わせて「高脂血症」と呼ぶのが一般的でしたが、血管の壁から余分な脂質成分を回収する善玉コレステロールの値が低いことも動脈硬化の危険因子であることが明らかになり、2007年より「脂質異常症」という言葉が用いられるようになりました。
高脂血症には、(1)原発性高脂血症という遺伝的に決定された要因によるもの、(2)二次性高脂血症という他の疾患(腎臓病や糖尿病、甲状腺機能異常など)や薬によって生じてくるもの、そして(3)生活習慣病といわれる飽食や運動不足に伴って生じてくるもの、に分類することができます。これらを必要に応じて鑑別診断するように努めています。
脈波図で血管の硬さや詰まり、血管年齢を測定し、頚動脈エコーで血管壁を観察しています。
脂質制限食や糖質制限食、適度な運動、肥満の是正、適切な飲酒量、禁煙などを助言しています。個々の病態に応じて血液中を流れる脂質成分の目標値を決め、数多い高脂血症薬の中から、お一人お一人に最適な薬を選択するように心掛けています。